睡眠とは |
睡眠とは? |
睡眠とはヒトをはじめ、様々な動物に見られる閉眼した静的な状態ですが、そもそも睡眠とはどのようなものなのでしょう?
犬や猫が眠っているのはよく見かけると思います。では魚や昆虫、植物に対しても睡眠という概念は存在するのでしょうか?
魚に関しては、じっとしている魚は眠ることもあるような気がしますが、一生涯泳ぎ続けるマグロなどはどうでしょう?
マグロは口と鰓を開けて遊泳しながら呼吸しますので、止まってしまうと窒息します。
魚は、ときどき動きを緩慢にして睡眠の代わりにしているようです。
イルカは特徴的な睡眠です。半球睡眠と呼ばれ、左右半分ずつ眠ることが出来ます。右脳が眠っているとき左目が閉じ、左脳が眠っているとき右目が閉じます。
学生時代、試験前は、半球睡眠が出来ないものかと思ったものです。常日頃からまじめに勉強していれば試験前もしっかり睡眠をとれるのですが。。。
話を戻します。このようにヒト意外でも睡眠を定義付ける根拠となるものはなんなのでしょう?
それがよく耳にする脳波です。
脳波(Brainwave)とは? |
私達の脳には非常にたくさんの神経細胞というものがあります。
これらはつながっているようですが、間にシナプスという接合システムを介しております。
ある神経細胞が興奮するとその情報を次の神経細胞に伝えるために出力側の細胞膜(シナプス前膜)から、神経伝達物質が放出されます。
その放出された物質は次につながっている神経細胞の細胞膜(シナプス後膜)上の受容体に結合します。
この結合によりイオン電流が流れ、次の神経細胞が興奮したり抑制したりするわけです。
この電気的なやり取りを頭皮上に貼り付けた電極で読み取ったものを脳波といいます。
脳波の種類 |
周波数により次のように分類されます。
デルタδ波 1〜3Hz
シータθ波 4〜7Hz
アルファα波 8〜13Hz
ベータβ波 14〜30Hz
ガンマγ波 30〜64Hz
なんでギリシャ文字の順番どおりにα、β、γ、δ、ε…となっていないのでしょう。覚えにくいですね。
睡眠の分類 |
睡眠はその脳波の状態により次のように分類されます。
覚醒
Stage 1
眠り始めのうとうとした状態です。覚醒時に見られたアルファ波が消失し、シータ波が優位になります。
瘤波(HUMP,VERTEX SHARP WAVE)と呼ばれる大きな鋭い波が見られます。
Stage 2
浅い眠りです。紡錘波(Sleep Spindle)と呼ばれるやや早い波や、群発波(K-complex)が見られるようになります。
Stage 3
深い眠りです。デルタ波が出現し、遅い波になってきましたが、まだ紡錘波は見られます。
Stage 4
もっとも深い眠りです。デルタ波が全体の半分以上に達し、紡錘波も消失します。
Stage REM
覚醒時に見られるようなベータ波などがみられます。
レム睡眠ってなに? |
睡眠のStage 1〜4をノンレム睡眠といいます。
Stage REMはレム睡眠です。
レム睡眠とノンレム睡眠はどう違うのでしょうか?
REMは、Rapid Eye Movementの略です。急速眼球運動と言います。これはレム睡眠期は目をキョロキョロ動かしていることを意味します。
眠っているにもかかわらず目が動いているのです。
さらに脳波はといいますと、覚醒時とよく似た波形を示します。
筋電図は最低レベルを示します。
すなわち体は休んでいるが、脳は活動しているという特徴があります。
このことからレム睡眠を逆説睡眠と言ったりします。就寝中の夢はこのレム睡眠期に見ます。
では逆にノンレム睡眠はどのような特徴をしているのでしょう。
それはレム睡眠とは逆で、脳は休んでいて、筋電図は活動状態を示すことがあります。
このときの脳波は振幅が大きく遅い(低周波)波を示すため、徐波睡眠といいます。
睡眠の周期 |
睡眠にはそのステージが周期的に現れてきます。
下の図は睡眠の周期を模式的にあらわしたものです。入眠はStage1から2,3,4とステップアップし、やがてレム睡眠期を迎えます。
レム睡眠期が終わると、あらためてStage1からです。
このような周期が90分くらいで繰り返されているのがわかります。
また周期を重ねていくにつれて眠りが浅くなりREM睡眠の割合が増していきます。
この図は、おおよそ20歳代から30歳代くらいを想定しております。新生児はREM睡眠の時間が全睡眠時間に対して半分ほどに達しますが、成人になるとREM睡眠が20パーセント程度になります。さらに加齢とともに眠りは浅くなるといわれています。80歳代くらいになるとStage3やStage4は消失します。
加齢による睡眠の変化 |
若い人の1日のリズムは、夜は夜更かし気味で朝起きられないというイメージがあります。それに対して、高齢の方は夜は比較的早めに就寝して、朝は非常に早いうちから起きておられるようです。これにはどうやらそのような傾向があるようです。
これらは特徴によっては病気として扱われ、前者は睡眠相後退症候群(Delayed sleep phase syndrome , DSPS)、後者は睡眠相前進症候群(Advanced sleep phase syndrome , ASPS)と呼ばれます。
僕も大学生の頃は、まったく朝は駄目でした。ときどき明け方ごろ帰宅したときは、すでに近所の年輩の方々が散歩していたりしてました。夜が遅い分、いまだに朝は苦手ですが。。。夜更かしがいけないのですね。。。
病気としては現れていなくても多くの方がこのような経験はあると思います。ついつい、携帯電話の普及で、夜中、友達と長電話してしまったり、深夜番組を見てしまうようなことは若い人には日常茶飯事でしょう。学校や仕事で昼間に出来ないことを夜やってしまったり、昼間の喧騒から一転、自室にこもると人恋しくなるのでしょうか。
対して、高齢の方は夜暗いうちから起床し、散歩したり、体操したり、新聞配達を待ったりなど、なかなか若者では真似の出来ない生活スタイルである方が多いと思います。
これらは、睡眠相の変化と呼びます。
概日リズム |
人は、特別な場合を除き、朝が来ると目覚め、夜が更けると眠たくなるという24時間の周期で生活しています。これは概日(がいじつ)リズム(サーカディアンリズム、Circadian rhythm)と呼ばれます。
万一、人を外界と完全に隔離させ、外界の様子を知ることがない状態にすればどうなるでしょう。私達は、たとえば朝、明るくなると自然に目が覚めたり、目覚まし時計をセットして起きたりします。夜は学校や仕事から帰って夕食をすませ、お風呂に入って就寝の準備が出来たら自然に眠たくなります。深夜のニュース番組を見たら眠るというような習慣がある人もいるでしょう。
まったく、外の明るさもわからず、時計もテレビ、ラジオもない状態では人はどのようなリズムで生活するのでしょうか。
このような状態では24時間周期ではなく、25時間周期かそれ以上になるといわれています。
このことをフリーランと呼びます。
この25時間周期の生体時計を朝日や体温その他の因子により24時間になるようにセットされるわけです。
概日リズム以外の体内時計 |
周期 | 名称 | 例 |
数分から数時間 | ultradian rhythm ウルトラディアンリズム |
睡眠周期 |
24時間 | 概日リズム
circadian rhythm サーカディアンリズム |
|
1ヶ月 | 概月リズム | 月経周期 |
1年 | 概年リズム | 冬眠 |