一次救命処置(BLS) |
外傷や疾病の急性発作などは突然にやってきます。そのとき、傷病者のその後の人生は、近くにいる人(バイスタンダー)の適切な対応にかかっていると言っても過言ではないでしょう。
万一、そのような場面に遭遇したときに、救急隊が到着するまでの間、どのようなことをすればよいかを認識しておく必要があります。適切に、処置された場合と、そうでなかった場合にはどれほどの違いがあるのでしょうか?
次に示すのはドリンカー曲線と呼ばれるものです。この曲線は、呼吸停止後、適切な救命処置を開始するまでの時間とその生存率の目安を示しています。
このグラフからもわかりますように、2分以内に救命処置を開始しておれば生存率は90%ですが、10分放置されてしまうと救命は絶望的になるということがわかります。いかに迅速な救命処置が大切であるかがわかります。
このような救命処置は、バイスタンダーが行う一次救命処置(BLS:basic life support)と、それに引き続いて行われる二次救命処置(ALS:advanced life support)に分けられます。
一次救命処置には、心肺蘇生(CPR:cardiopulmonary resuscitation)と自動体外式除細動器(AED:automated external defibrillator)の使用が含まれます。二次救命処置は、マニュアル除細動器の使用や気管挿管、静脈路の確保などがこれにあたります。
一次救命処置(BLS)
そこに居合わせたのが、自分だけなら、まずは119番通報し、AEDを準備します。
複数人いるなら、応援を要請し、落ち着いている人を指名して、119番通報の指示とAEDを準備する指示を出します。その他にも人がいるなら、野次馬を退去させるように指示します。
ここからはBLSのABCDに沿って行います。
A:Airway 気道確保と呼吸確認
B:Breathing 人工呼吸
C:Circulation 循環の確認、胸骨圧迫
D:Defibrillation 除細動
反応を確認する。
呼びかけに反応するか。
反応があれば傷病者の訴えを聞き、適切な処置を施します。
反応無し→119番通報・AED準備
気道確保
頭部後屈あご先挙上
呼吸確認→有効な呼吸無し・死戦期呼吸(あえぎ呼吸)
気道を確保したら、傷病者の口元に頬を近づけて目線は胸郭を見る。
これで、
”見て”(胸郭の動きを確認)
”聞いて”(呼吸音を聞く)
”感じて”(吐息を感じる)
のすべてで呼吸の確認をします。
有効な呼吸が無いか、死戦期呼吸(あえぎ呼吸)なら人工呼吸を開始します。人工呼吸を行うときは、感染予防のためにできればポケットマスクを使用します。そのためにはポケットマスクを常に携帯しておくことが望ましいです。2千円ちょっとくらいで市販されています。
脈確認
甲状軟骨(喉仏)のすぐ横に指、数本で頚動脈を触知します。
脈あり呼吸無し→約10回/分で人工呼吸(2分おきに脈の確認)
脈無し若しくは脈不明・呼吸無し→直ちにCPR(心肺蘇生法)開始:胸骨圧迫30回人工呼吸2回
胸骨圧迫は1分間に100回くらいの速さで、毎回、圧迫後直ちに胸が元に戻るまで力を抜きます。
人工呼吸の吹き込み時間は1回1秒(深呼吸はしない。普段どおりの呼吸で人工呼吸)
救急隊への引継ぎ、もしくはAEDが除細動の準備完了までこのままCPRを続けます。
AED到着
○ 電源を入れる
電源を入れます。蓋を開けると自動で電源が入る機種もあります。
○ 電極パッドを貼る準備
上半身の服を脱がします。脱がすのに時間がかかる服は破ります。傷病者の汗をふき取る。同時にネックレス・湿布などは取る。
体毛が濃い場合は剃ります。電極パッドが2組以上入っておれば、1度パッドを貼り、体毛ごと剥がします。体毛が除去できましたら、新しい電極パッドを貼ります。
○ 電極パッドを貼る
電極パッドを貼る位置は、基本的には右胸(鎖骨の下)と左胸の下に貼ります。体に傷がある場合はやけど防止のためにその部位を避けます。またペースメーカーを使用されている傷病者は、そこから2〜3センチ以上パッドを離すようにしてください。
○ 心電図解析
パッドを貼るか、解析ボタンを押すと(機種により異なる)、「傷病者から離れてください」といった内容のアナウンスが流れますので、ただちに傷病者から離れます。傷病者には手を触れずに心電図の解析を待ちます。
○ 電気ショック(除細動)
「電気ショックが必要です」とアナウンスが流れると、自動的に充電を開始しますので、傷病者から離れていることを確認し、電気ショックボタン(赤やオレンジ色のボタン)が点滅しますので、アナウンスに従い押します。その後はただちにCPRを再開します。
「電気ショック不要です。」のメッセージが流れるとCPRを再開します。
除細動により細動が消失した後は心停止している場合が多いので、CPRを継続します。