1770年にラグランジュ(Joseph-Louis Lagrange)によって示されたものです。
ラグランジュの定理などと書かれたりしている場合もあります。4平方の定理とは次のようなものです。
4平方の定理 Lagrange's four-square theorem
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すべての自然数は4つの平方数の和であらわすことができる。
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つまり
1 = 12 + 02 + 02 + 02
2 = 12 + 12 + 02 + 02
3 = 12 + 12 + 12 + 02
4 = 12 + 12 + 12 + 12
5 = 22 + 12 + 02 + 02
6 = 22 + 12 + 12 + 02
…
といった感じです。なんとなくかけそうな感じがしますねえ。しかし証明はというとそれほど簡単なものではないようです。
では早速証明してみましょう。
証明)
(x12 + x22 + x32 + x42) (y12 + y22 + y32 + y42)
= (x1y1 + x2y2 + x3y3 + x4y4 )2 + (x1y2 - x2y1 + x3y4 - x4y3 )2
+ (x1y3 - x3y1 + x4y2 - x2y4 )2 + (x1y4 - x4y1 + x2y3 - x3y2 )2
という恒等式があります。このとき左辺が合成数の場合、
X = x12 + x22 + x32 + x42
と
Y = y12 + y22 + y32 + y42
に適当な素数または合成数を代入して、例えば左辺が21なら
X = 3、Y = 7
を代入して3や7が4つの平方数の和であらわすことができればいいことになります。
左辺が30なら
X = 3、Y = 10
とすれば3や10が4つの平方数の和であらわすことができればいいことになります。しかし10はさらに2と5に分解して左辺が30なら、結局2と3と5が平方数であらわすことができればいいことになります。つまりこのように考えていくと素数に関して4つの平方数であらわすことができることを証明すればいいわけですね。
2 = 12 + 12 + 02 + 02
より奇素数 p についての証明を行います。
(p - 1)/2は整数になりますね。そこで次の2つの集合を考えます。
S = { x2|x = 0、1、2、…、(p - 1)/2}
T = { -1-y2|y = 0、1、2、…、(p - 1)/2}
Sの要素とTの要素は共通するものがない、つまり
S∩T =φ
です。また、Sの要素に p を法として合同なものはありません。
なぜなら集合Sの2つの要素 a2、b2 が p を法として合同であるなら
(a2 - b2) ≡ 0 (mod p)
(a + b) (a - b) ≡ 0 (mod p)
(a + b)と p は互いに素なので
a -b ≡ 0 (mod p)
となりますが、こうなるのは
a = b
のときのみです。
同様にして集合Tのなかにも、p を法として合同なものはありません。
しかし、集合Sの要素の個数と集合Tの要素の個数は、
|S|=|T|= 1 + (p-1)/2 = (p + 1)/2
となり
|S∪T|= |S|+|T|= p + 1
となります。つまり集合SとTの要素の個数の合計は (P + 1) 個なのです。ということはそれぞれの集合から p を法として合同な要素を一つずつ選び出すことができるはずです。
そこで集合Sよりx2を、集合Tより-1-y2 を選び出し、
x2 ≡ -1-y2 (mod p) 0≦x、y≦(p-1)/2
とします。これを変形すると、
x2 + y2 + 12 +02 ≡ 0(mod p)
となり
0 ≦ 0、1、x、y ≦(p-1)/2なので、
x12 + x22 + x32 + x42 = kp (k = 1、2、3、…) (kはこの式であらわせる絶対値が最小の値)…(*)
0 ≦ xi ≦(p-1)/2 ( i = 1、2、3、4)
は整数解を持ちます。さらに、
0 ≦ kp = x12 + x22 + x32 + x42 ≦ {(p-1)/2}2×4 < (p -1)2 < p2
∴k < p
これで無限降下法の第一段階が成立したことになります。
k = 1 なら定理は明らかに示されています。
k > 1 のとき
-k/2 < y1、y2、y3、y4 < k/2 で
x1≡y1 (mod k)
x2≡y2 (mod k)
x3≡y3 (mod k)
x4≡y4 (mod k)
となる y1、y2、y3、y4 をそれぞれとります。このとき、
(x12 + x22 + x32 + x42) ≡ (y12 + y22 + y32 + y42) ≡ 0 (mod k)
なので
y12 + y22 + y32 + y42 = k'k
とおきます。
k' = (y12 + y22 + y32 + y42)/k ≦ 4 × (k/2)2 / k = k
k' = 0 と仮定すると
y1、y2、y3、y4は全て k/2。このとき、
x1 ≡ k/2 (mod k)
なので
x1 = k/2 + sk
とおくことができます。
x12 = (k/2 + sk)2
= k2/4 + sk2 + s2k2
≡ k2/4 (mod k2)
x2、x3、x4に関しても同様にして結局、
x12 + x22 + x32 + x42
≡ k2/4 + k2/4 + k2/4 + k2/4 (mod k2)
≡ k2 (mod k2)
≡ 0 (mod k2)
このことは、(*)に反しますね。従って
0 < k' < k
kp × kk' = (x12 + x22 + x32 + x42) × (y12 + y22 + y32 + y42)
= (x1y1 + x2y2 + x3y3 + x4y4 )2 + (x1y2 - x2y1 + x3y4 - x4y3 )2
+ (x1y3 - x3y1 + x4y2 - x2y4 )2 + (x1y4 - x4y1 + x2y3 - x3y2 )2 …(**)
ここで
x1 = y1 + Ak
x2 = y2 + Bk
x3 = y3 + Ck
x4 = y4 + Dk
とおくと(**)の右辺の第一項は
{(y1 + Ak)y1 + (y2 + Bk)y2 + (y3 + Ck)y3 + (y4 + Dk)y4}
≡ (y12 + y22 + y32 + y42) (mod k)
≡ 0 (mod k)
なので k2 で割り切れます。
同様にして第二項、第三項、第四項も k2 で割り切れます。
よって(**)は
k'p = {(x1y1 + x2y2 + x3y3 + x4y4 )/k}2 + {(x1y2 - x2y1 + x3y4 - x4y3 )/k}2
+ {(x1y3 - x3y1 + x4y2 - x2y4 )/k}2 + {(x1y4 - x4y1 + x2y3 - x3y2 )/k}2
と自然数であらわすことができました。このことにより無限降下法の第二段階が示されたことになります。
(証明終)
参照:ウェアリングの定理