ナヴァホ暗号 (Navajo Code)

第二次世界大戦が始まったとき、各国政府は秘密の通信の必要性を感じていました。解読されない暗号を必要としていたのです。

専門家が新しい暗号を発明しようとしている間、ロサンゼルスのエンジニア、フィリップ・ジョンストン (Philip Johnston) もこの問題に取り組んでいました。
彼の両親はナヴァホ族保留地の宣教師であったので、ジョンストンは少年時代よりナヴァホ語にとても精通していました。彼はこのナヴァホ語が暗号に使うことができないかと考えたのです。ジョンストンは、軍の幹部にナヴァホ語がどれだけ優れているかを訴えました。

彼は、その複雑なナヴァホ語が優れた軍の暗号となると考えていたのです。
ナヴァホ語のあらゆる音節は、異なる何かを意味しているので、正しく発音されなければならないのです。トーンの微妙な違いでも、意味を変えることができるのです。
4つの言葉のトーンの分類がある、つまり、低い、高い、語尾を上げる、語尾を下げる、です。
例えば、「薬」と「口」に対する語は、同じ発音を持ちますが、異なるトーンで言われるのです。
また、ナヴァホ語は、その言い回しが変わっています。
例えば、ナヴァホ族は、

「私は、空腹である」

というときに、

「飢えが、私を傷つけている」

と言うのです。

もう一つの魅惑的な特徴が、その言語が決して翻訳されていなかったということでした。実際にそれまで研究されていなかったですし、他の部族の者にとって、理解不可能なものでした。
1940年には40人弱の人しかその言語を知らなかったのです。
ジョンストンが強調したことは、ナヴァホ暗号が他の暗号と異なるところはメッセージの暗号化が単一ではないということでした。
ジョンストンの提案は受けいれられ、軍隊はナヴァホ族の新兵 (Navajo Code Talkers) を募集して、暗号の訓練を始めました。
最初に、ナヴァホ族は211の軍用語を学びました。そもそも、ナヴァホ族には軍用語というものが存在せず、それぞれの軍用語がナヴァホ語として新しくつくられていったのです。
また、戦時中、何も書きとめられることができなかったので、それらを暗号兵たちは全て記憶しなければならなかったのです。
暗号を制作する際、次の4つの基本事項が存在します。


・その対応する暗号語が彼らにとって、暗記しやすくするために、より単純で、論理的に対応しなければならない

・暗号語は、記述的であるか、創造的でなければならない

・暗号語は、時間を節約するために、比較的短いものでなければならない

・簡単に他の語と混同されるような語を避けなければならない

それから、暗号兵たちは場所の名前やコードブックにない言葉を暗号化するときのためにアルファベット暗号を加えました。

そこで試しに、日本のパープル暗号の解読に成功していた海軍情報部が、英語の文章を暗号化したものを、解読しようと試みてみました。
しかし彼らのナヴァホ暗号についての見解は次のようなものでした。

「それは、わけのわからない話のように聞こえた。我々はそれを解読するどころか、書き取ることすらできなかった。」

第2次世界大戦中に、450人のナヴァホ族が暗号トレーニングを受け、30人の男達がそのトレーニングを完了しました。

対して、日本のパープル暗号は、暗号機から作り出されているものでした。

アメリカ合衆国の情報部は、スパイによって得られた情報で、日本のパープル暗号機の複製を造って、受信した敵のメッセージを解読し始めました。

第二次世界大戦中、多くの種類の暗号が、使用されていました。
ナヴァホ暗号とパープル暗号は、そのうちの2つです。
ナヴァホ暗号は、他の多くの暗号と比較して非常に優れ、アメリカ合衆国を勝利に導きましたけど、戦後数十年の間、ナヴァホ族の功績が公表されることはなかったのです。

 ナヴァホ暗号 (Navajo Code)