<DESの誕生>
1960年代にはいるとコンピューターの価格が下がり、民間企業がコンピューターを導入するようになってきました。そんな中で各社が独自の暗号システムを使用していると、企業間の情報に混乱が生じるため、1973年5月15日、アメリカ商務省標準局(NBS)は暗号の標準化を公募しました。
そこで登場するのがルシファー(Lucifer)です。ルシファーの開発者、ホルスト・ファイステル(Horst Feistel)は、ドイツからの亡命者で、彼は空軍ケンブリッジ研究所(Air Force (USAF) ambridge Research Center)で暗号の研究を行っていました。
ここで横槍を入れたのが国家安全保障局(NSA:National Security Agency)です。NSAとしては暗号研究を独占したいということと、NSAが解読できない暗号が開発されては困るということでした。
こうしてファイステルに圧力をかけて、彼はMitre Corporationに職場を移し、最終的にニューヨーク近郊のIBMトーマス・J・ワトソン研究所に勤務することになりました。こうして数年間、NSAの監視から逃れることができたファイステルは、強力な暗号システム、ルシファーアルゴリズムの開発に成功しました。ルシファーはIBMが金融取引を安全にするために開発したものでした。
1970年代前半に開発された当時最強の暗号システム、ルシファーは、銀行などの金融機関などで広く使用されるようになりました。
ルシファーは秘密鍵暗号ですが、その強力さ故に、鍵を知らなければ事実上解読不可能なものでした。もちろん、優秀な人材と、設備を持ったNSAでさえも解読は不可能なものだったのです。
そこでNSAはルシファーが標準化される前に、圧力をかけて鍵の候補数を約10京通りにするように求めたのです。これで充分に強力な暗号である上にNSAにとっては解読不可能なものではなくなったのです。こうして、1976年11月23日、DES(Data Encryption Standard)と命名され標準化されることになりました。
<DESの概要>